Type: Nullの名前の由来・設定考察
仕事を奪ってくれ、私は働きたくないので
Type: Null
Pokemon Sword
“Rumor has it that the theft of top-secret research notes led to a new instance of this Pokémon being created in the Galar region.”
詳しい内容は “続きを読む” から。
概要
第七世代で登場した、タイプ:ヌルです。
その異常な名前と意味ありげな姿が発売前から話題になりました。
ライバルポジションのグラジオのパートナーであり、ストーリーでも数度対峙することになります。
機能は不完全ながら能力は速さを除いて完全体と変わらず、総合値は御三家の最終形態と同等です。
準伝説で進化するものは初で、伝説と広く見ても同期のコスモッグと共に初めてでした。
名前の由来
Type: Null (Synthetic Pokemon)
Type “タイプ” + Null “独語:零” です。
(変数などの)値が定義されていない、という意味での null がより適切ではあるかもしれませんが、いずれにせよ語源は同じです。
ナル派とヌル派がいるようですが、少なくともドイツ語で言えばヌルが近いです。
タイプ:ヌル(もしくはシルヴァディ)の本来の名称は、「タイプ:フル」であることがゲーム内の資料で確認できます。
しかし、制御不能な失敗作であったことからマスクで機能を制限され、この姿になっています。
日本語名は本来の名前に一本の打ち消し線を加えたような形になっていて、なかなか上手いですね。
分類名の方は、「人工」とも「合成」とも取れる英語の Synthetic が姿も表していて秀逸です。
なお、一般名詞で構成される名前のためか、通例英語名と同名を使うスペイン語・イタリア語で異なる名前を持つ初めてのポケモンです。
この特徴は、『SV』のパラドックスポケモンを除けば唯一となります。
図鑑説明と設定
“Rumor has it that the theft of top-secret research notes led to a new instance of this Pokémon being created in the Galar region.”
“噂によれば、極秘の研究資料の盗難が、このポケモンの新しい個体がガラル地方で造られるのに繋がったということだ。”
『SM』時点での記録によれば、タイプ:ヌルは3体製造されています。
グラジオが連れ出したもの、主人公が受け取るものの他にもう一体がいるということになります。
今後も製造できるような方法だったようなので、これからも個体が増えることに一応の説明をつけたということになります。
言語AIは構造を解するか
突然、専門的な話になります。
このところ、Chat GPTが有名になり、人間と遜色ない(もしくはそれ以上の)文章を出力してきます。
こういった大量のデータを取り入れて分析することで成り立っているAIは、人間の言語能力とは根本的に異なっているというのが生成文法の前提です。
ただ、モデルが発展する上でひょっとしたらと思ったため、Chat GPTが言語の階層構造を理解しているか簡単にテストしてみました。
方法としては形態素分析になります。
最初にAIに生成文法と形態論についての知識を確認して文脈を作ってから、英語の語を形態素に分割するよう指示しました。
(文法理論についての確認への返答はやや古く感じられるものの、十分に存在していると考えられるものでした)
>では、形態素分析の課題を与えます。
次の語を形態素ごとに[]で分けて記述してください。
Internationalization
>Internationalizationを形態素ごとに分けると、以下のようになります。
[In][ter][na][tion][al][i][za][tion]
なお、この単語においては、接頭辞「In-」が存在し、「-ize」が動詞の語尾となっていることに注意が必要です。
このように、音節ごとの分割が返答として出力されました。
おそらく、ネット上に多く存在する英語辞書などでこの分割がされているからでしょう。
次に、先ほどの例に対して正しい(主流な)構造を提示し、形態素は二項ずつ結びつくことを確認した後、再度課題を与えました。
>では、それを踏まえて次の語を分析してください。
Malnutrition
>大変失礼いたしました。ご指摘ありがとうございます。 Malnutritionを階層的に分解した場合、以下のようになります。
[[[Mal][nu]][[tri][tion]]]
“Mal”は接頭辞で “bad” や “poor” を意味します。”nutrition”は「栄養」という意味の語幹で、前半の”nu”はそのまま “栄養” を表し、後半の”tri”は「三つの」という意味を持ちます。つまり、Malnutritionは「栄養不良」という意味を持つ単語となります。
これは私の与えた例もあまり良くないのですが、もっともらしい解説を加えているものの検討はずれであることが見てとれます。
英語の形態素としては分割が過剰なのはともかく、mal-nu が一つの部分を成しているのがかなりいただけません。
あとまあ、分割の方法はおそらく音節ごとのままですね。
ということで、おそらく、現状ではChat GPTは階層性を理解していないと思われます。
もちろん実験が雑な上、内部処理と表出は別、人間も多少の訓練をしなければ形態素分析はできないなど反論は無数にあります。
あと、まだ文レベルでの検証を真面目にしていないのもあります。
しかし、おそらくやはりAIの処理は人間とは違う、という態度を変える結果は出ないのではないかと思います。
さて、今週のポケモンはタイプ:ヌルでした。
突然難解な話を入れてしまったのはやや申し訳なく思います。
ツールとしては非常に有用なので、AIとは仲良くやっていきたいですね。
それでは、来週もまたよろしくお願いします。
前回の記事へ